一般的な内科や外科には、病気の発症や怪我の発生にともなって訪れることになるでしょう。歯科もそうであるという認識を持つ人が多いですが、歯科は歯に異常が無いと思っていても定期的に検診を受ける必要があるのです。
定期検診をすると、自覚症状のない問題のある状況を発見することができ、早い段階で歯の病気の治療を開始することができます。また、仮に歯の病気が見つからなかったとしても、歯磨きの不備による歯の状態の悪さを指摘し、正しい歯磨きの方法を教わることができます。このように、既に発生した異常や病気の治療ではなく、そうした状態にならないように歯科検診を受けることを「予防歯科」と言います。
●虫歯や歯周病にならない
きちんとした予防ができれば、虫歯や歯周病などの歯の疾患を回避することができます。これらの歯の病気は進行の度合いに応じて治療の規模も大きくなってい きます。ドリルで歯を削るという治療法が一般的なイメージとして浸透している かもしれませんが、場合によっては歯ぐきを切開する手術も必要になることがあります。
●治療費を減らすことができる
前述のとおり、歯の病気は進行度合いによって治療の程度も大きくなっていきま す。そして、程度の大きい治療ほど1回の治療費や通院回数の増加に伴う医療費 の総額の増加を招きます。予防歯科においては、治療する場合でも簡単な歯垢の 除去と歯磨きの指導に留まるので、治療費も安くて済みます。
●痛みが少ない
日頃から歯磨きなどのケアをしっかりと行っていても、虫歯や歯周病のリスクは つきまといます。しかし、定期的に歯科検診を受けていれば、仮にこれらの症状 が現れても早い段階で発見し、治療に移ることができます。歯科に限りませんが、 早い段階で病気を発見できれば、軽めの治療法で完治することが多いです。歯科 においても、虫歯や歯周病の初期の段階で発見できれば、歯を削ったり抜いたりといった、麻酔を必要とするような痛みを伴う治療を必要としません。
●自分の歯が残る
これが最も重要な事ですが、予防歯科に重点を置くことで将来的な歯の残存数が 大きく違ってきます。実際、予防歯科の浸透していない日本よりも、予防歯科の先進国たる欧米諸国では、高齢者の歯の残存数に大きな差が開いています。入れ 歯や差し歯では、以降のメンテナンスも手間になりますし、食べられる物の種類も制限されます。自分の歯をいつまでも残したいと思うのであれば、予防歯科が重要になるのです。
●定期健診
各人の口の状態に合わせて、定期的に歯科医院での検診を行います。プロの手によるしっかりとした確認は、普段は見えにくい歯の隙間などの歯垢も逃しません。小さな症状も見逃さず、歯の病気の早期発見につなげることができます。
●PMTC
「PTMC」とは、「Professional Mechanical Tooth Cleaning」の略で、その意味は「専門家（歯科医師）による専用機器を用いた歯の清掃」を表しています。一 般的な歯ブラシ等では除去できない歯垢や歯石を取り除くことができます。また、 軽度の着色や口臭の改善にも効果があります。
●ブラッシング指導
日頃から歯磨きをきちんと行うことは、歯の病気の予防に効果的です。しかし、正しい方法で歯を磨かないと歯垢や歯石が蓄積する原因となります。そして、正しい歯磨きの方法は、歯並びなどに影響されるため人によって異なります。歯科医師が各人の歯の状況を見て、それに適したブラッシングの指導を行うことで自宅での予防を最適化します。
●フッ素塗布
歯に塗られたフッ素は、虫歯によって溶かされた歯を「再石灰化」させる効果を高めることができます。フッ素を含んだ唾液によって再石灰化した歯は、酸に強くなるという特性があり、虫歯の原因となる酸から歯を守ることができます。
歯の病気の予防は、歯科でしかできないというわけではありません。自宅でも簡単に予防できる方法は数多くあります。その最たるは「歯磨き」です。歯科で教わった正しい歯磨きの方法を続けていきましょう。可能な限り3食の後に1回ずつ、1日計3回の歯磨きを心がけてください。とは言え、仕事や学業の関係でそれも難しいでしょうから、歯磨きができない場面では「キシリトールガム」が効果的です。安易な方法と思われるかもしれませんが、意外と虫歯の予防に効果的なのです。また、歯磨きにおいては「デンタルフロス」を用いることをお勧めします。どうしても歯ブラシだけでは歯と歯の隙間が死角になってしまいますが、デンタルフロスはそういった場所の洗浄に効果を発揮してくれます。あと、食事の際にはよく噛んで召し上がってください。咀嚼は唾液の分泌を促進し、口内環境の改善と歯の再石灰化を促進する効果があります。